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| 90年代・小さな漁船に経済難民を詰め込んで東南アジアから日本へ密航を図るボートピープルが大きな社会問題となっていた時代。ベトナムでシクロ(タクシーの自転車版)で日金を稼ぐ少年達が、貧困からの脱出を図るため「黄金の島」日本への密航に挑む物語。 着眼点は面白いし、サスペンスには定評のある作者だから、結構期待していた。しかし、一通り読んでみて、思っていたよりも少し物足りなかった、というのが正直な感想。 勤勉で真面目なベトナム少年・チャウを主人公にしたところは良い。彼と共にシクロで稼ぐ少年グループも個性的なメンバーが揃っている。クールでありながら仲間思いなリーダー・カイ、抜け目ない行動の中にも男達を引き寄せる妖しい魅力をもった少女トゥエイ、年長者でグループの調停役ティエップ・・・。しかし、実はこのベトナム人グループの存在感が薄い。 これは、物語のもう一方の軸となる日本人ヤクザ・修司とその愛人(といっていいかどうか微妙な位置づけだが)奈津の物語にも、ある程度重点が置かれていることによる。実際、チャウたちがベトナムの脱出計画を図るにあたり、修司の存在は不可欠であり、ある程度の描写は必要だったろう。しかし、修司と奈津の煮え切らない関係をこまごまと描いているのが、却ってベトナムでの物語を断ち切るような形になってしまっているのが残念だった。読み終えてみると奈津の存在意義に「?」が付くところもあった。 ここはむしろ、ベトナム人グループを前面に押し出し、修司の話はもっと後ろに、更に言うなら奈津の存在ももっと軽くしても良かったんじゃないかと思う。 ベトナムの社会構造や町の描写などはうまく出来ていただけにそこのところが残念だった。 |