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| 直木賞受賞作。いわば作者の代表作の一つになるんだろう、この作品。多様なジャンルを取り揃えるこの人の作品の中では「火車」と同系統に位置する社会派ミステリーというところか、今回もかなり骨太な内容になっている。 キーワードは「占有屋」。確かこの作品が発表された当時に色々話題になってた記憶はあるな。裁判所の競売物件などに居座り、新たな家主への不動産移転を妨害することで不当な利益を手にする手口だな。 抵当権やら賃貸借権やら色々法律的な専門知識を必要とする分野なんで、小説のネタとしては、下手に足を踏み入れても難儀するだけの難しいテーマだ。 しかし、そこはさすがというべきか、ドキュメンタリー調の淡々とした進行で、実に丁寧に「占有屋」とそれに絡んで発生した「事件」を描写している。 この作品は、小説とは言いながら、特定の主人公は存在せず、関係者のインタビューを基にしたドキュメンタリー記事のような体裁をしている。そのインタビューも事件の周辺から外堀を埋めるように「事件」を囲い込んでいくため、最初は単なる「一家4人惨殺」だった事件の背後に、いかに複雑な背景があり、それぞれにいかにも現代的な、社会的病巣が隠されているか、徐々に明らかになっていく構成になってる。 まるで雑誌の記事を読むような気安さで、複雑な事件を読み解いていく面白さがある。 一方で、その体裁ゆえに、ストーリーがあまりに淡々としすぎているきらいはある。登場人物が相当多数にわたり、しかも軸になる人物がいないので、感情移入もしにくい点も気になる。ま、この作品で取り上げている事件が、一人の視点から見たものでは到底理解しきれない複雑さをもっているから止むを得ないのだろうが、面白いけれど、盛り上がらないという奇妙な気分を味わうことになった。 しかし、そんな淡々とした展開であっても、600ページ超の分厚い文庫を一気に読ませてしまう筆力も逆に凄いということもできる。読み応えや知的興奮みたいなものは十分にあるのだけれど、感動はやや薄い。・・・個人的には評価の難しい作品かな。 |