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| アガサクリスティの傑作「ABC殺人事件」をモチーフにした競作短編集。 都合5人のミステリ作家が寄稿しているが、そのうち作品を呼んだことがあるのは有栖川有栖だけ。あと恩田陸は名前だけ知ってるが(「僕たち」シリーズの作者だったと思う)、後の3人はまったくの初見。しかし、それぞれの作品冒頭に著者のプロフィールが掲載されているので、そこそこ情報を仕入れた状態で読むことはできた。 この短編集は、ABC殺人事件をモチーフにしているといっても、全部がABC殺人になってるわけではない。おそらく「連続性」ということが共通項になっているのだろう。 面白かった順で言えば、ABCD包囲網(法月綸太郎)>あなたと夜と音楽と(恩田陸)>ABCキラー(有栖川有栖)>連鎖する数字(貫井徳郎)>猫の家のアリス(加納朋子)という順か。 ABCD包囲網 いい感じの先の読めなさ加減。一見何の関係もない事故や殺人事件に対して、いちいち「自首」してくる男を軸にストーリーが展開。なぜ、彼がこじつけのように、やってもいない事件に対して「自首」してくるのか?やがて見えてくるそれぞれの事件の連続性と最後のどんでん返し。 ミステリーの王道を行って作品で、ある意味安心して読めた。短編ならではの切れのよさがあったと思う。 あなたと夜と音楽と 上記ABCD包囲網が直球なら、この作品は完全な変化球。全編が男女のDJのやり取りで語られている。最初はただの悪戯に思えた連続置物事件の真意と、二人のDJの軽妙な会話がおもしろかった。ただ、この事件の仕掛けが、競作短編集の趣旨からはかなりずれている印象を受けるのが残念といえば残念。 ABCキラー この短編集の冒頭に掲載されているが、それにふさわしい見事なまでの「ABC」殺人事件。ミステリとしての上手さはさすがのものだが、ちょっと少ない枚数に詰め込みすぎた、という印象を受ける。もうちょっと話を膨らませて中篇にしたほうがいい作品になってたのかも知れない。 連鎖する数字 個人的に落ちが気に入らなかった。そこに持っていくまでの、次々と語り手を変える手法による個性的な登場人物たちの描写と緊張感の演出はなかなかのものだったのだけど・・・ 猫の家のアリス これだけ他の作品から数段落ちる印象。なんか頼まれたから書いた、みたいな大雑把な設定がいまいち。作品のスケールも妙に小さいし。一人の作者による短編集に収録されているのなら、息抜き程度の存在価値もあるのかも知れないが、この短編集は他の作品がそれなりにレベル高いからなぁ・・・ といったところで、一つを除けば、なかなかレベルの高い短編集になっていると思う。時間が空いたときにさっと読むにはちょうどいい作品だろう。 個人的には、巻末にちょっとでも良いから、この企画に関する著者の対談でも載っていると良かったかな、と思う。 |