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フォー・ディア・ライフ

著者
柴田よしき

 新宿を舞台にしたハードボイルドミステリ。読みやすいけれども、特段の印象の残らない作品だ。決して出来が悪いわけじゃないのだが、悪い言い方をすれば凡作と言うことになるのかも。

 主人公の花咲は、刑事くずれの私立探偵。そして新宿で保育園の園長でもある。
 「保育園の園長」という設定が、この手のハードボイルド系作品としては珍しく、この作品の一番の特徴になっていると思う。新宿というロケーション設定ゆえ、預けられる子供たちも様々な社会的・家庭的な問題を抱えており、花咲はそんな子供たちの幸せのため、探偵稼業によって園の維持のための金を稼いでいる、というわけだ。

 この「保育園の園長」と「私立探偵」と言う要素、作品中において、それぞれを別個にみてみれば、なかなか上手く描けていると思う。しかし、これを一つの作品として見たときに「?」となってしまうのだ。
 というのも、園長と探偵、それぞれのエピソードがほぼ完全に独立してしまっており、やや作品全体の構成に一貫性がないのだ。そのため、ラストのエピソードも、園長編と探偵編、それぞれ独立して存在しており、読者としては、二度エンディングを見せられているような、すっきりしない感じが残る。

 作品に二つの要素が内包されていると言っても、やはりメインは探偵稼業のほう、行方不明になった女子中学生とチンピラ崩れの高校生の探索。それぞれ、家庭的な事情などのほか、マンガやインターネットといったネタを取り込んでおり、作品に特徴をつけようという意欲は見えるのだが、その素材を十分に生かしきっていない。ここも、園長という設定と漫画・ネットという小道具がアンバランスになっているのだ。それに漫画やネットについて言うと、作者は本で読んだ知識だけでこの作品を書いているような感じがして、あまり迫真性が感じられない。また、捜査が進展する場合が多分に偶然によっているというのも、やや興を削がれる。

 文章自体は軽快で読みやすいのだが、心に残るものが余りない。そういう意味では作者には失礼ながら、暇つぶしに読むのがちょうどいい作品、ということになってしまうのかな?