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童話物語

著者
向山貴彦

 典型的なファンタジー作品。ただ、多分に指輪物語とかエンデとかを意識した作品で、ライトノベルにありがちなアニメ調の作品とは一線を画した、俗にいう「ハイ・ファンタジー」といっていい雰囲気をもっている。

 クローシャ大陸の南にある小さな村で、貧しさにあえぎながら生きる少女ペチカが主人公。作品そのものは二部構成になっており、偶然妖精フィツと知り合ったペチカが、迷信深い村人たちに村を追い出され、さらに彼女を憎む守頭からの逃避行を描いたのが上巻。それから一年後、なくしてしまった母親の写真を探しに、世界の果てにあるという「忘れ物預かり所」へ向かうペチカの旅を描いているのが下巻。そして作品全体の根底に、人類が絶滅するという「妖精の日」への足音が存在する。

 正直言えば、上巻は読むのがなかなかしんどかった。とにかく主人公のペチカは不遇な存在として描かれており、ペチカ自身に心安らぐときがひと時もない。それにペチカ自身も、貧すれば鈍するじゃないけど、かなり浅ましく心の狭い人間として描かれており、素直に同情できる性格じゃなかったし。ただ、母親に対する純粋な思いってものを常に持っているのだけが救い、って感じで。
 ただ、内容的にはそれだけのしんどさを持っていながらも、文体自体はかなり読みやすく、変に「ファンタジーだから」という理由で、用語に奇妙にこだわることもない。適度に砕けた言葉を使っているので(そういう意味では「童話物語」というタイトルも言いえて妙かも。別に子供向けというわけではないのだが)、結構スイスイ読み進めることはできた。

 そして下巻。クローシャの首都パーパスに身を落ち着けたペチカの周囲に、彼女の理解者が一挙に増え、ペチカ自身もかつて母親が生きていたときの心の落ち着きを取り戻しつつあることもあり、話としては上巻ほどささくれだった雰囲気は無い。むしろ、塔の街パーパスや「忘れ物預かり所」、クローシャ鉄道など、この手のファンタジーらしい山場が随所に織り込まれており、一気に読ませる迫力を持っている。振り返って考えれば、上巻のしんどい展開があればこそ、この下巻が生きてくるのであり、そういう意味ではこの作品の構成は正しかったのだろう。

 この作品、確かにハイファンタジーではあるのだが、随所にアニメ的な表現を織り込んでおり、日本のアニメになれた思考回路を持っている読者にとっては、その時々のシーンがはっきりと頭に浮かぶような演出があった。ジブリあたりがアニメ化しても面白いのかも、と思わせるような雰囲気なのだな。
 そんなこんなで、両方あわせると結構な分量になるのだが、その量を感じさせない読みやすさと構成力を持った作品。タイトルにもうひと工夫あればよかったのかな。この作品全体として「童話」を感じさせるところは,読みやすさ、という点を除けばあまりなかったし。