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心とろかすような

著者
宮部みゆき

 パーフェクトブルーで登場した蓮見事務所の面々が活躍する短編集。
 短編集だけに、パーフェクトブルーのような大掛かりな事件はひとつだけで、後の作品はちょっとしたドタバタ、って感じ。けど、長編・短編を比べてみると、短編のほうが、このシリーズにはあっているように思う。事務所を取り巻く登場人物たちそれぞれのキャラクターが立っているので、短編でも人物の心理が読みやすいし、展開がある程度予想つくだけに読みやすい。

 各話を見ていくと・・・

 タイトルにもなっている「心とろかすような」。
 このタイトルのような言葉づかいってあまり聞いたことないので、読む前は「何が『心とろかすような』モノなんだろう?」って思ってた。タネが明かされてみれば、ちょっとこじつけみたいな面もないではなかったけど、一応納得。
・・・・ま、どっちかというとこのタイトルにかかる事件はおまけで、むしろ「糸ちゃんと進也の朝帰り」っていうインパクトありきの話だったようにも思う。冒頭のワンシーンがまずあって、それにくっつけるようにその後の事件を作った、って感じだ。
 ただ、一つ気になったのは、事件の元となった少女って、将来どんな女になるんだろう?ってこと。およそ普通の人間にはなれないよなぁ。

 「手のひらの森の下で」
 これはちょっと印象薄い。まぁ、犬である主人公のマサが人間とコミュニケーション取れないことへの苛立ちというか、じれったさが一番上手く出ている作品だったとは思うけど、ちょっとトリックに手が込みすぎてたかな。

 「白い騎士は歌う」
 推理小説としてのトリックとしては、ややありきたりな内容ではあったが、事件にかかわった人たちの心情を考えると、この短編集の中では一番心に残る何かがある作品だった。できればこれ、長編でじっくり書いてもらいたかったかな。

 「マサ、留守番をする」
 蓮見事務所の面々はほとんど顔を出さず、ほとんどマサの一人舞台だが、この本に収録された作品のなかでは、これが一番面白かった。犬であるがゆえの情報網とか、人間に飼われる動物の悲哀なんかも盛り込んで、まさに「マサの事件簿」の名にふさわしい話だった。

 「マサの弁明」
 これはおまけかな。なんか、なくてもよかったような気がするけど・・・落ちも内輪ネタっぽいし。

 ま、なんだかんだ言っても楽しませてもらいました。これに収録されている作品はほとんど90年代初頭に発表された作品みたいだけど、書こうと思えば、いくらでも続きが書けるような設定だし、これだけで終わらせてしまうのはもったいないキャラクターたちなので、できればこれからも、描き続けていってほしいシリーズかな。