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| 今をときめくベストセラー作家、宮部みゆき。 人気があるのには、ちゃんと理由はある。ライトタッチのミステリから、社会派、時代劇まで揃えた幅広いジャンル。軽妙なリズム感のある読みやすい文体。魅力的な人物造形など、その作品の魅力を上げればきりがない。 個人的には、彼女の一連の作品では「ステップファーザーステップ」に代表されるような、軽い感覚で読める推理モノが気に入っており、同系統に属すると思われる「パーフェクト・ブルー」も、なかなか楽しめる作品に仕上がっていた。 この作品の良さ、その一番のポイントは、語り手である主人公に、探偵社に飼われている犬・「マサ」を据えているところかな。動物を語り手にした小説は時々見かけるけど、それらに共通する長所は、雰囲気がずいぶん和やかになるということ。動物は、作品舞台となる人間社会に対して第三者的な位置にいるため、客観的にナレーションすることができる。それに、本質的に主人公自身に重大な危害が及ぶことが少ないため、読者は安心して読み進めることができるんだろうな。このパーフェクト・ブルーでは、背景となる事件が結構シリアスなものなので、マサのとぼけた口調のナレーションで結構肩の力が抜けたところがあってほっとする。 また、マサは単なる語り手にとどまらず、物語中、随所でいかにも犬らしい活躍を見せている。ま、時には「いくらなんでもそこまで頭良い犬はいないだろう」っていう行動もあるけど、それはそれでご愛敬。宮部みゆきの現代物って結構ファンタジー入ってる作品も多いし(タイムスリップやら超能力やら)、あまり違和感はなかった。むしろいい味を出していたかな。 マサの相棒(本当は主人にあたるんだろうけど)の加代子も面白い人物だ。およそ探偵社の調査員らしくない、ほわっとした雰囲気を持ちながらも、調査員として、人間として、押さえるところはきちっと押さえるなど、読んでて飽きさせない性格。 その他、脇を固める登場人物たちも、それぞれに魅力的。謎解きをメインにしたミステリであっても、やはり人物造形をちゃんと描くとこれほどに面白くなるモノなんだ、ということを改めて実感させてくれる内容だった。 肝心の謎解きの方は高校野球と、ある企業との絡みを軸に語られているのだけど、結構背景は複雑。最初の頃こそ、単なる殺人事件として話を展開させているので、すっと理解できるのだが、ラスト近くになるといろんな人物の思惑が絡み合い、結構読み解くのも大変なほどのストーリーになってしまってる。 それでも、盛り上がるところをきちっと押さえて、辺に混乱させることなく、ラストへ向けて着々と話を構築していく辺りはさすが宮部作品、といったところか。 わがままを言えば、メインとなる事件をもうちょっと単純な構図にしてもらっても良かったかな、と思う。ま、それでも先に書いたように、登場人物たちが魅力的で、ストーリー展開そのもののテンポはなかなか軽快なので、読んでて引っかかってしまうと言うことはなかったのだけれども。 しかし、マイナス評価が考えられるポイントとすれば、そのくらいで、それ以外の点ではほとんど文句のない出来。作品世界の完成度が高いだけに、続刊「心とろかすような」をすぐにも読みたいと思わせるに十分な内容だった。その後もシリーズ化して欲しいくらいだ。 |