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| いかにも推理小説らしい推理小説。 ただ、「らしさ」が鼻につく余り、読み進める動機が、物語を楽しむことよりも謎解きの答えを探すことに集中してしまった。まるで、数学の問題をやったあと、答えを知るために回答欄の解説を読んでる気分。そういう意味では、やや作業的な気分で読み進めることになってしまった。 なんといっても、主人公の女性が事件に首をつっこむ動機にやや無理を感じる。自分の不倫相手の奥さんを殺した男を探す、だからなぁ。しかもその奥さんの性格が、かなりイヤな感じときた。普通、主人公の立場にしてみれば、こんな事件には首つっこまんだろう。巻き込まれ型ならともかく、放っておけば害はないのに、自ら首を突っ込んでいってるんだもの。作中で何度か主人公がその「理由」について語っていたけれども、どうにも納得できず。結局、主人公の動機に対する「なぜ?」は最後まで抜けなかった。 また、せっかく主人公を保安士(万引き専門の警備員みたいなものか)という珍しい職業に設定しているにもかかわらず、どうもそれが話の中では生かされていないように感じた。これが、只の主婦でも、雑誌記者でも、それほどプロットに大きな影響は出なかったろう。単に「こういう職業があります」的な紹介にとどまっているのが、変に肩すかしを食らったと言う印象。 そして、終盤の展開のまずさが何より痛い。序盤はまだ「奥さん殺しの犯人探し」という目的に添って主人公が行動しているので、構図としてはわかりやすいのだが、後半になると、その他の複数の事件が絡みあうようになり、それぞれの事件の繋がりが見えにくくなってくる。これは「複雑な背景を読み解く」という楽しさともちょっと違う。どうも作者の「意外な展開を用意したい」という意図が透けて見えるようで、読んでていい気分ではなかった。 冷めたポイントといえばもう一つ。殺された奥さんがダイイングメッセージを残していた、というところ。今時、死に際に血染めの文字なんてギャグマンガにしか使われないようなネタじゃないか。しかもその落ちにもまた脱力。 乱歩賞受賞作ということで結構期待していたところはあるんだけど、ちょっと裏切られた格好になってしまったな。作品の構造的な欠陥が多いだけに、ここをこうすれば良くなった、というポイントも示しにくい、困ったちゃんな作品だった。 |