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スキップ

著者
北村薫

 この小説のタイトルである「スキップ」ということばから、連想される意味は二つ。
 VTRで言うところの早送り。そして、軽快なステップ。この作品を含む連作シリーズが「時と人」という主題を掲げている事からすると、前者が本来のタイトルの意味なのだろう。
 しかし、読了後に改めてタイトルを見たとき感じた気持ち。それはまぎれもなく後者の「スキップ」だった。

 70年代初頭、17歳だった主人公は、ふとしたきっかけで「心」だけが25年後、40歳で教師になっていた自分に「スキップ」してしまう。外見は40歳だが、中身は17歳。彼女を取り巻くのは20世紀末の「未来世界」。25年間という時間のギャップがもたらす、主人公の違和感による笑い、ノスタルジィを随所に織り込みながらも、この物語は単なる時間旅行モノに終わってはいない。

 この物語の主題は、17歳の心をもった教師と18歳の心と体を持った生徒たちとの交流を描くことにある。教師が生徒と同じ心理、同じ目線で接するコトで、見えてくる様々な悩み、葛藤。作者はこれを感受性豊かな主人公の心情を通して鮮やかに描き出している。
 おそらく作者は、この学園物語を描くため、17歳の心を持つ教師を描きたいがために、「スキップ」という仕掛けを用意したのだろう。そしてそれが見事に物語として結実している。

 主人公と、クラスの皆が一緒になって踏む「スキップ」のステップ。その軽快な足音が聞こえてくるような作品である。