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ニューシネマパラダイス

公開年 監督 主演
1989 ジュゼッペ・トルナトーレ ジャック・ペラン

 映画の黄金時代を切々と描ききった名作。映画としてはかなり長編の部類に入るが、それだけの時間を掛けたからこそ得られる感動を持った作品だと思う。

 ストーリーは大雑把に言って、三つのパートに分けられる。主人公の少年トトと映画技師アルフレードの交流を描いた少年時代。成長したトト=サルヴァトーレと初恋の女性エレナとの大恋愛を描いた青年時代。そして、映画監督として成功を収めたサルヴァトーレの帰郷を描く壮年時代。いずれもこの物語に欠くことのできない役割を持っているが、なんといっても印象的なのがトトと映画の出会いを描いた少年時代だ。

 映画を純粋に愛し、日々フィルムと戯れるトト少年の愛くるしさといったらない。そして、教会の映画技師アルフレードとの心温まる交流。映画の黄金時代を彩った様々な名画とともに溌剌と進むストーリーは、とても微笑ましく、見ているこちらまでトト少年の笑顔につられてしまいそうになる。映画を上映している教会・パラダイス座の古ぼけたイメージやそこに出入りする人達の貧しくも笑いのある日常描写も手伝って、映画の黄金時代へのノスタルジーをかきたてられてしまう。
 教会炎上とアルフレード失明というショッキングな事件をもって、少年時代は終わりを告げ、トト・サルヴァトーレとエレナの恋愛にメインを置いた青年時代は、ラブストーリー色が濃いだけに、少年時代を通して盛り上がった映画へのノスタルジーという側面から見ると、ちょっと物足りない。ただ、その二人をそっと見守るアルフレードの存在とか、新しくなった「新パラダイス座」を舞台とした映画技師サルヴァトーレの日常も、コメディとシリアスが適度に交錯していて、飽きない展開ではあったのだけど。

 ただ、この青年時代があったからこそ、30年間故郷を離れていたトトの帰郷を描いた壮年時代のノスタルジーが一層強く感じられたのは間違いの無いところ。30年ぶりに我が家に帰り、自分の部屋に飾られた様々な少年・青年時代の思い出の品を、老いたサルヴァトーレが眺めるシーン、廃館となったパラダイス座の中央に立つシーン、そして、アルフレードの形見のフィルムを上映するラストシーンは涙なしには見られない。

 しかし、壮年時代に一つ残念だったのが、エレナとの再会のエピソード。青年時代の最後、なぜエレナは約束どおり現れなかったのか、その辺の謎解きがされ、30年の時を経てエレナとトトは理解しあうのだが、正直いうと、観ていてちょっと興ざめだった。ノスタルジーに彩られた様々な思い出が、あまりに生々しいカタチで目の前に突きつけられたような。それもこの作品を構成する一つの側面なのかもしれないが、個人的には、エレナの思い出は思い出として、そっとしておいて欲しかったところ。
 ただ、そのエレナのシーンに感じたもやもやも、ラストシーンで気分的にはすべてすっきり流されてしまった。あの形見のフィルムにこめられたアルフレードの映画に対する思いというのが、ダイレクトに自分に伝わってくるような気がして、映画による映画賛歌たるこの作品のラストを飾るにふさわしい演出だった。

 全編にノスタルジー色が濃く、下手をするとそれがしつこさに変わりかねないところなのだけれど、まったくそれを感じさせない、抑揚の効いた演出が、この映画をこれだけ印象的な作品にしているのだろうな。そして何よりもトト少年の素晴らしいキャラクター。これらによって、この映画が極めて良質の映画賛歌になっているのだろう。素直に名作だといえる作品だった。