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カサブランカ

公開年 監督 主演
1943 マイケル・カーチス ハンフリー・ボガード

 「君の瞳に乾杯」。
 今となっては、コメディ調に用いられることしかない台詞だけど、元はこの映画からの出典ということらしい。しかし、主人公のリックは、この歯の浮く台詞が似合う男であることよ。一見、非情かつクールなように見せながら、その実はとても情にもろい。キザな台詞が良く似合うキャラクターだと思う。

 作品の舞台となっているのは、第二次大戦中期のモロッコ・カサブランカ。この作品が封切られたのも戦時中とあって、随分と戦争の色濃い作品に仕上がっている。でも、あくまでも戦争は舞台装置の一つに過ぎなくて、メインはカジノバーの店主であるリックとフランス・レジスタンス幹部の妻であるイルザの切ないラブストーリー。

 ただ、そのストーリーそのものよりも、個性豊かな登場人物たちのほうについつい、目が行ってしまうな。冒頭で触れた、クールながら情にもろい男、リックがその最たる位置にいると思うけど、その他の人々もいい味を出している。

 ヒロインのイルザは、とにかくもチャーミング。それは、イルザというよりは、彼女を演じたイングリット・バーグマンの魅力なんだろうな。物語後半では、リックと夫であるラズロとの板ばさみにあい、深刻な表情が多くなるが、中盤、リックの回想に登場するイルザは、ホントに生き生きしていて、モノクロの画面を通してでも、その花のような美しさに鮮烈な印象を受ける。個人的には、この映画一番のポイントは、と問われれば、彼女の存在を上げるだろう。それくらいに印象的な女性だった。

 一方、まさに劇中のキャラクターとして魅力的なのがルノー署長。警察官でありながら、能天気な発言・立ち振る舞いを欠かさず、ともすれば深刻になりがちな作品の雰囲気に、一種の清涼剤のような役割を果たしている。しかも、ドイツ将校には頭が上がらない立場から、時に親ドイツ的な態度を取りながらも、最後には「フランス人」として、リックたちの策略に見事応えてみせる心意気も見せるなど、きわめておいしい位置付けの人物だったな。彼とリックが二人で歩くラストシーンは、悲恋に終わったリックとイルザの残した「友情」という財産をよく表現しており、なかなかに印象的だった。
 イルザの夫であるラズロもいい男なんである。リックに惹かれるイルザの気持ちを見抜きながら、それを悟らせもせずに、逆にこの戦時下において、彼女をどうやって無事に平和の地アメリカへ連れて行くのか、という難問を真摯に考えている。あまり目立たない存在ではあるけど、隠れた好演、といったところだろう。

 ちょっと難を言うとすれば、物語後半の通行証をめぐる、リック・イルザ・ラズロの心理的な移ろいがやや見えにくかったのが残念かな。もうちょっと、それぞれがじっくり話しあうシーンが欲しかった気がする。正直言えば、ラスト、何でラズロが素直にイルザと一緒に飛行機に乗るのかもわからなかったし。まぁ、そうすることで、あのリックとルノーのラストシーンが出来たのだと思えば、心情的には納得できなくはないんだけど。

 しかし、1943年という時代に、ハリウッドではこんな映画が作られていたんだよな。翻って日本の当時の様子なんかを考えるに、やはりアメリカってのは懐の深い国なんだと改めて認識させられた次第。そういう意味でも、興味深い映画ではありました。しかしなんといっても、イングリット・バーグマンの存在が第一なんだけど。